古事記・古代ロマンのマンガ(1)久松文雄 諸星大二郎 星野之宣


古事記編纂1300年だった2012年に、仕事で古事記を改めて詳しく学ぶ機会がありました。

「古事記」「日本書紀」・・合わせて「記紀神話」といいますが、日本の神話はヤオヨロズの神々がとにかくたくさ~ん出てきて、複雑で難しいイメージがあります。

実際に細かいところまでいくと、もう果てしがなくて難しいですが、色々と勉強していくと大まかに<9つの物語>を知っておくと良いなというのが、自分なりに分かってきました。

1.国産み  2.黄泉の国  3.岩戸開き  4.ヤマタノオロチ  5.因幡の素兎 6.国譲り
7.天孫降臨  8.海幸彦山幸彦  9.神武東遷

・・以上の、9つの物語。神社庁のホームページを見ると「天孫降臨」までの7つが記されていますので、7つまで知っておけば、あなたも立派な神話マスター~という感じでしょうか。


■今回紹介のマンガ

【1】「まんがで読む古事記」 久松文雄 2009(平成21)年~
【2】「妖怪ハンター」 諸星大二郎 1974(昭和49)~
【3】「宗像教授伝奇考」 星野之宣 1990(平成2)、1994~


【1】「まんがで読む古事記」 久松文雄 2009(平成21)年~

何を学ぶにしてもまずはマンガから入る自分には、古事記~日本神話最初の入門用にはとにかくもうこれが一番分かりやすかったです。久松文雄先生というと私の年代には、テレビまんがの「スーパージェッター」を、小さい頃に楽しみに観ていたのを覚えています。1965年(昭和40年)からの放映。

<古事記の世界を読者に伝えるためには、マンガであるがゆえに原本に忠実であるべきとの思いを強くしていた>

・・優しくて見やすい絵柄の、久松文雄先生「まんがで読む古事記」単行本第2巻の後書きにこうありました。

勉強したくて読むには、この<原本に忠実>というのが、自分的に大事で有難いところで。そしてまた、マンガ的な脚色がなくてもとても面白く、古事記の物語~神話世界の物語が本当に面白いのだなあというのを率直に伝えてくれました。


●「国産み」古事記~日本神話9話のうちの第1話

イザナキとイザナミが結婚して、日本の島々を産みました。続いて<ヤオヨロズノカミ(たくさんの神々)>を産みますが、火の神を産んだイザナミは火傷で死んでしまいました。

・・ここまでが「国産み」神話のお話の流れ。


●「黄泉の国」古事記~日本神話9話のうちの第2話

亡くなった妻イザナミを忘れられないイザナキは、「黄泉の国(死者の国)」までイザナミを迎えにいくと・・、

<愛しいあなた、私はもう黄泉の国の食べ物を食べてしまったので、生き返ることはできませんが、黄泉の国の神に相談してみます>

・・とイザナミの返答。そして・・

<待っている間、決して、私の事を、覗いて見てはいけませんよ>。

・・見るなのタブーの物語ですね。当然のようにイザナキは待ちきれずに、イザナミを覗いて見てしまうと、体中に8つの雷神がバチバチと音を立てており腐ってウジだらけのイザナミの姿があり、恐ろしさにイザナキは逃げ出しました。


<あなたは私に恥をかかせましたね>

・・怒ったイザナミは、黄泉醜女(ヨモツシコメ)というゾンビのような妖怪や、黄泉の国の1500の軍勢にイザナキを追わせた。

軍勢を追い払い黄泉比良坂(よもつひらさか)まで逃げたイザナキと、イザナミの最後の別れのシーン。

イザナミ<愛しいあなた、あなたがこんなひどい仕打ちをなさるのなら、これからあなたの国の人間を、1日千人殺します>

イザナキ<愛しい妻よ、ならば私は、1日千五百人、産まれるようにしよう>

・・この夫婦神が交わした言葉が、誓約(うけい=ヤオヨロズノカミの約束事のお呪いみたいなもの)になって、これ以後、日本の人口は増えるようになった。これが「黄泉の国」神話の物語です。


【2】「妖怪ハンター」 諸星大二郎 1974(昭和49)~

諸星大二郎先生の「妖怪ハンター」です。1974年(昭和49年)、少年ジャンプに連載。ジャンプの部数が100万部~200万部と伸びていって、マガジンを抜いて少年誌トップになった頃に始まった、それまでになかった個性のマンガでした。

<稗田礼二郎(このマンガの主人公)の名は、「古事記」の暗誦者・稗田阿礼からとったものです>

・・と、コミックス表紙カバー折り返しの前書きにあります。

<第1話で「古事記」を扱った>・・。

このマンガでは、<比留子古墳>に現れた<ヒルコさま>という、得体のしれない恐ろしい異形のものが描かれてます。

古事記~日本神話の「国産み」の物語で、イザナキとイザナミが日本の島々とヤオヨロズノカミを産みますが、最初に生まれたのは<骨のない水蛭子>だったので、<葦の舟に乗せて流し><天に帰るよう>祈った・・と、あります。

手塚治虫先生の「どろろ」で<人間らしさをすいとられたヌケガラ>として産まれて、タライに乗せて川に捨てられた主人公の百鬼丸も蛭子の神話を彷彿とさせますよね。


【3】「宗像教授伝奇考」 星野之宣 1990(平成2)、1994~

星野之宣先生の「宗像教授伝記考」。1990年(平成2年)に「コミックバーガー」、94年から99年、「コミックトム」などに連載。

1975年(昭和50年)の少年ジャンプで星野之宣先生は「ブルーシティ」という、これもまた、それまでになかったタイプのハードなSFマンガで前年の諸星大二郎先生と共に、ぼくらの友達の間でも当時随分と話題になってました。両先生同士も、親交が深いそうですね。


「宗像教授伝奇考」の、第5集にある「菊理媛は何を告げたか」。

黄泉の国の神話、イザナキとイザナミの別れの最後の場面に、古事記には記述がなくて日本書紀の方にだけ<ククリヒメ>という神様が出てきます。

ククリヒメは、イザナキに「何かを告げて」「イザナキはそれを褒めて、その場を去った」

・・とだけ書かれている、謎のエピソードなんですね(こういうワケの分からない部分も、神話の魅力のひとつと思えます)。

何を告げたかの部分・・星野之宣先生の考察と創造はこの短編のクライマックスなので、ここでは伏せておきますけれど、とにかく身が引き締まる感じで、唸らされました。抽象的ですみません。興味を持たれた方が実際に作品を読まれた時の感激を邪魔したくないですから、すごくボカシて書いてます。


「宗像教授伝記考」からもうひとつ、第2集にある「白雪の伝説」。

<コロボックル><白雪姫><黄泉の国>の、民間伝承・童話・神話が絡み合って「菊理媛は何を告げたか」と同じく40ページの短編ですが、しみじみと感動させられた不思議なお話でした。

いつも思いますけれど、マンガ家の先生って、本当に、天才だらけですよね。

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