ガクエン退屈男/魔王ダンテ/永井豪 ぼくらマガジン 昭45〜


■ガクエン退屈男/永井豪

学園バイオレンス・アクション。永井豪の暴力衝動が過剰なほどに発揮された、最初の作品だろう。前年に少年チャンピオンで連載開始された「あばしり一家」にもバイオレンス・シーンがあるにはあったが、「あばしり~」はハレンチギャグが主な作品なので。

強暴・凶悪化の一途をたどる学園闘争。教師は武装し、学内には用心棒が配備された。後に「教育ウエスタン時代」と呼ばれた時代・・。

・・~などというお題目、背景設定は実はどうでも良いことで、開放した学園の先生を笑いながら処刑しまくる学生ゲリラ、早乙女門土の、「学園を開放するなんざ、ホンの言い訳よ。戦う理由がなきゃあ戦いにくいからだよ。・・本当は、戦いたいから戦うんだ! 殺したいから殺したんだ!」というセリフに、このマンガの何たるかが集約されている。

そんな門土を異常者となじる、「ガクエン~」のもう1人の主人公、美貌の青年、身堂竜馬も、冷静な自分に比べ野獣のように戦う門土を崇拝する学生達を、結局皆殺しにしてしまうなど、お話の序盤から異常な暴力&殺戮のオン・パレード。単行本はサンワイドコミックスから昭和60年に発行されているが、今では復刻はとても無理だろうから、もう少し詳しく紹介しておこう。

中盤から登場の、錦織つばさ。ビキニ姿でバイクを駆る、女学生ゲリラ集団 ” つばさ党 ” の党首。怪力無双の、学生ゲリラのアイドル。・・そのつばさを捕らえた ” 地獄 ” という醜い化け物キャラクターが、子供の頃に読んで強く印象に残っている。

「名前は忘れた。事故でね・・。過去の記憶もない。・・だが人は俺のことを地獄と呼ぶ。地獄と!」
~ コマンドスーツに身をつつみ、ピストルも通用しないフランケンシュタインのような怪物で、門土のバズーカ砲で腹を貫かれ、右腕を吹っ飛ばされても死なない。顔面直撃の、3発目のバズーカで、門土辛くも勝利。

” 地獄 ” の主人、三泥虎の助も強烈だった。
包帯につつみ隠されたその素顔を、捕らえたつばさに暴かれると、中から現れたのは身堂竜馬とうりふたつな美しい顔、・・だがその右半分は火傷でどろどろにただれている。自分が虎の助のクローン人間であったことを知った、少年時代の竜馬によって顔に硫酸を浴びせられ、屋敷に火をつけられ両親ともども焼き殺されていたはずの男だったのだ。

虎の助が住んでいる ” 悪魔の館 ” 、・・これがまた凄い。片輪に生まれたかわりに、様々な超能力を持っている、妖怪のような化け物集団の巣窟・・。怪力のつばさも、これでは館からの脱出は不可能。地下の拷問室で、醜い虎の助にいたぶられる、鎖につながれたオールヌードのつばさの絵は、子供心にも、猟奇的でエロチックだったなあ・・。

ラストのクライマックスは、虎の助の支配する学園 vs 竜馬の学生ゲリラ軍、そして、悪魔の館の化け物軍団 vs 門土軍と、竜馬に救出されたつばさ率いるつばさ党。門土のバズーカでバラバラにされたはずの ” 地獄 ” も、なんの説明もなく無キズで復活して参戦。ひたすら暴走する、永井豪の暴力と殺戮衝動は、後の代表傑作のひとつ「バイオレンスジャック」(少年マガジン/昭和48(’73)年~)へと、形を変え、より昇華されて受け継がれることになるのだろう。

早乙女門土、身堂竜馬の2人は、永井豪先生にとって特にお気に入りのキャラクターらしく、「バイオレンスジャック」ではセミ・レギュラー的な扱いを受けていた。(ちなみに、「~ジャック」に2人が初登場した頃の「激闘! 門土編」~「黄金都市(エルドラド)編」が、永井豪のペンの迫力が最も冴え渡っていた時期だと思う。冴え渡りすぎてPTAから小言をいわれ、「~ジャック」はいちどポシャってしまったのだけれど・・)。

ガクエン退屈男/永井豪 昭45~


■魔王ダンテ/永井豪

数千年もの間ヒマラヤの氷山に氷づけとなっていた、悪魔王ダンテの復活の生贄として、テレポートさせられた宇津木涼。ダンテに惨殺され、食われるも、黒魔術の儀式により現世に甦ったダンテの意識を支配していたのは、宇津木涼の精神だった。

「デビルマン」以前の、永井豪初の、神と悪魔を題材にした作品。
悪魔こそが、太古の地球先住人類の変身した姿で、宇宙からやって来たエネルギー生命体=神の正体は地球の侵略者であり、現在の人類は、肉体を得て超能力をなくした神の子孫であったのだ。

サン・コミックスから単行本化されていたが、入手は困難。昨 ’99年に講談社コミックスでやっと復刻された(加筆改訂版)。第1次ウルトラブームの最中の作品なので、怪獣マンガのテイストも色濃い。・・というか、永井豪自身が怪獣マンガを描いてみようと試みてこうなったと、インタビューか何かで読んだ覚えはあるが・・。

モーニング誌上で連載中の「デビルマンレディー」の作中で、魔王ダンテが復活したが、同作にデビルマン=不動明が登場した時に比べ、永井豪のペンのノリが極端に落ちる。永井豪センセイ、ダンテにはあまり愛着がないのかなあ・・。

魔王ダンテ/永井豪 昭46(45?)~


※永井豪の2大傑作「デビルマン」「バイオレンスジャック」の萌芽は、ぼくらマガジンにあったのだね。

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