男坂 車田正美/少年ジャンプ 1984(昭和59)年~


集英社のアプリ「ジャンプ+」で車田正美先生の「男坂」初回無料購読配信が始まったので、読んでみました。

※画像は、コミックスを持っていないので「別冊太陽 子どもの昭和史 少年漫画の世界Ⅱ」より車田正美先生のデビュー作「スケ番あらし(1974 昭49 ~)」。


「男坂」・・少年ジャンプ本誌連載は1984年半ばから、半年ほど。ジャンプの看板マンガとなった「リングにかけろ(1976 昭51 末~)」から次のヒット作「風魔の小次郎(1982 昭57 末~)」と、代表作「聖闘士星矢(1985 昭60 末~)」に挟まれた、目立ってはいないごく短期の連載作品でした。


後々、ネットで<伝説の打ち切り作品>としてラストの見開きページがネタ的にもちょくちょく話題になっていますね。

上記3作のような超人スーパーバトルものではなかったようなので、ジャンプ的な人気を得難かったのでしょうか。


リアルタイムだと、この頃自分は学生で、2週に1度くらい贅沢をしてラーメン店か喫茶店で昼食がてら、店にあるマンガ週刊誌をまとめて全部読み漁っていました。「男坂」も読んではいたはずがラスト以外は全く覚えておらず、40年近くぶりに新鮮な気分で読み返すことが出来ました。


成る程、スーパーバトルものと比べると小さい読者には厳しいのかな・・とはいえ、黒澤明の「七人の侍」前半の仲間集めの楽しさはあり・・しかし、同じ様な仲間集め展開の、飯森公一先生「60億のシラミ(1978 昭53 ~ 月刊少年チャンピオン)」も、集める途中で打ち切りになったのだよな・・などと、色々ブツブツと考えながら読み進めていると、本当に、唐突に、あの伝説のラストページになって、終わってしまいました。


「描きたかった作品」という車田正美先生のコメント情報もネットだったかで読んでいたので、この打ち切りは悔しかったろうな・・と思いながら最終ページをめくると、・・何と、まだ続きがあるではないですか?


絵柄からすると、かなりもう、描かれた年代も違っている。調べると、2014年より続きが始まっていて、しかも現在連載中なんですね。

<衝撃のラストから30年ぶりに連載再開>という特集記事もあり。全く知らなくて、お恥ずかしい。


「聖闘士星矢」など車田正美先生の作品を読んでいると、徹底した<プロのエンターテイメント>の魅力をいつも感じさせられて、次のページをめくらせずにはおかないプロの技量に圧倒されてました。


新連載の「男坂」も、描かれる少年主人公達の成長物語の展開に、積み上げられたベテランエンターテイメント作家トッププロの底力と人生観の裏付けが感じられ頼もしく、唸らされます。


またお若い頃の作風と少しだけ違う点で、少年キャラクター達の<笑顔>がとても多く描かれるようになっているのが、自分もおじさんになった一読者として個人的にしみじみと嬉しく感じました。配信分を一挙に読み終えました。続きが楽しみ。


ずっと昔一度打ち切りになった自作品を、その後すぐに日本の少年マンガ誌に残る大ヒット作を産み出してご自身の「男坂」を登り詰め、押しも押されぬ大家となられたその30数年も後に、<描きたかった>前作をそのまま続きから始められるというクリエイター魂にとてもロマンを覚え、感動し、心より敬服します。

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