地獄くん/ムロタニツネ象 少年サンデー/少年/中1時代 昭和41(’66)年 ~ 43
40年以上も昔の、昭和42年。私の保育園時代。「地獄くん」が掲載された光文社「少年」誌が何故か園に数冊あったので、そこで読みました。
凄くインパクトがあり、ずっと覚えていたので、’99年にマンガのホームページ(このブログの前身)を作った時に、真っ先に紹介しました。その時は検索しても「地獄くん」を取り上げたサイトは同年代の方の1件だけだったので、掲示板に書込みしてお友達になりました(笑)。
「地獄くん」のコミックスは、’99年前後に刊行された大田出版QJマンガ選書版の「完本・地獄くん」と、昭61(’86)年の朝日ソノラマ・サンワイドコミックス版があります。前者には帯に「伝説のトラウマホラー」と謳い文句があり、後者サンワイド版は表紙の折り返しに「一風変わったブラック・ユーモア」と書かれています。各々その時代の空気が出てますね。掲載時だったなら、普通に「怪奇マンガ」なのでしょう。自分的にはこれが一番しっくりきます。
悪人に、額をピストルで撃ち抜かれた地獄くん顔アップのコマ。
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白目の地獄くん。
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べーっと舌を出した地獄くん。舌の上には今撃たれたばかりのピストルの弾が。
この3連コンボのコマ割りはインパクトあり過ぎて、数十年忘れようがありませんでした(笑)。
地獄くんの胸ぐらを引っつかんだ悪人の手に、地獄くんのドクロ型ボタンが噛み付いて、ガギギギギ…ガギギギギと指に食い込んでいくシーンも強烈だったなあ。他にも、ずっと覚えていたシーンがたくさんありました。
「地獄くん」の掲載年度は、少年マガジンで水木しげる「墓場の鬼太郎」連載が始まった年でもあるので、鬼太郎の向こうを張って、怪奇ものの流行り始めの時期だったのかも知れません(この翌年にはテレビ特撮で「怪奇大作戦」も始まりました)。
鬼太郎の目玉おやじと似たようなマスコット的存在(?)として、地獄くんの胸ポケットには、万年筆型生物の”万年とっつぁん”がいます。万年筆のインクのような液体治療薬で、どんな怪我でも治す、特殊な力を持っています。
第1話で、轢き逃げでバラバラにされた、少女の母親を地獄くんがプラモデルのように組み立て(笑)、それを万年とっつぁんが少女の涙をインクがわりに吸い取って、薬に変えて母親の遺体に注射し、蘇らせます。・・怪奇でショッキングな場面が記憶に残っていた「地獄くん」なのですが、久しぶりに読み返してみると、作者の優しさが表れているような、美しいシーンと思えましたね。
罪のない人たちには優しさも見せる地獄くんですが、悪を行った者に対しては、徹底的に、それこそ地獄の果てまで追い込む恐ろしい仕打ちを見せます。…といっても、地獄くんがその意思で悪人を追い込んでいく、という感じではなく、この世には人の力のおよばない”因果応報”というものがあり、悪は悪ゆえに地獄に堕ちていく(バチがあたる)運命なのであり、”地獄くん”という得体の知れない存在は”因果応報”のビジュアル的象徴として描かれているようでもあります。
悪い事をするとバチが当たるよ、という概念が通じない世の中だと感じた時など、幼少時に見た地獄くんが本当に現れたら良いななんて、たまに思ったりします。…悪い事をすると、地獄くんがくるよ(笑)。