タイガーマスク運動 全国に現れた、伊達直人
梶原一騎、辻なおき「タイガーマスク」。
自分に息子がいたら、直人という名前にしようと、40年以上も前からそう決めてました(笑)。
やはり実際に「タイガーマスク」で育った世代としては、嬉しいですね。全国に広がっているという、伊達直人の名前で孤児達にランドセル等のプレゼントが贈られている、所謂タイガーマスク運動。
「タイガーマスク」は、昭和43(’68)年から月刊誌「ぼくら]で連載が始まりぼくら休刊後「ぼくらマガジン」~「少年マガジン」へと連載が引き継がれた、梶原一騎原作、辻なおき作画による人気プロレスマンガです。伊達直人とは、その主人公の覆面プロレスラータイガーマスクが虎のマスクを脱いだ姿。
孤児院「ちびっこハウス」で育った子供時代の伊達直人は、虎のように強くなって、自分を捨てた世の中を見返してやるんだ・・とハウスを脱走して行方不明になった。時は流れ、残酷な反則技で全米を震え上がらせる大悪役プロレスラー、黄色い悪魔と呼ばれるタイガーマスクが出現する。
タイガーマスクの正体は、ハウスを脱走した後、秘密プロレス組織「虎の穴」に拾われプロレスラーとして鍛え上げられた伊達直人だった。
大金持ちの親戚に引き取られ今は裕福に暮らしている「おっちょこちょいのキザ兄ちゃん」として、来日したタイガーマスクである事を隠し、生まれ育ったちびっこハウスを訪問した伊達直人だが、経営難にあえぐハウスは借金のかたに暴力団に売り飛ばされる寸前だった。
プロレスで稼いだファイトマネーから、借金を肩代わりした伊達直人。しかしそのファイトマネーの半金は、プロレス組織「虎の穴」に上納せねばならないお金だった。
「虎の穴」とは、プロレスビジネスを営むマフィアの様な秘密組織で、世界中から集めた身寄りのない子供を地獄の特訓で悪役プロレスラーとして育て、プロレスのリングに送り込んでいた。虎の穴出身のレスラーには「悪役プロレスラーである事」「ファイトマネーの半金を虎の穴に上納する事」等の掟が課せられ、伊達直人のように掟に背いた者は死をもって償わねばならないとされている。
リングの上では殺人も合法・・であるとして、伊達直人=タイガーマスクの元に次々と放たれる虎の穴の刺客プロレスラー。死を覚悟しながら、タイガーマスクは虎の穴の強豪と闘い続け、タイガーマスク=伊達直人の正体を隠したまま、故郷ちびっこハウスをはじめ自分と同じ孤児達への贈り物を続けるのだった・・。
マンガ「タイガーマスク」の物語設定は大体、以上のような感じ。私のちょうど保育園卒業から小学校低学年の時期の連載で、毎回もう夢中になって読んでました。テレビアニメが始まったのはマンガ連載の1年後からで、初放映の日には熱を出して寝込んでいたのに、何が何でも起きてテレビを観たのを覚えています(笑)。
「タイガーマスク」は、子供心に「男の生き方」を、初めて学ばせてもらった作品です。
虎の穴出身悪役プロレスラーとして、残虐反則ファイトを得意としたタイガーマスクを応援する、ちびっこハウスの健太少年。
「おれはタイガーマスクの悪役ぶりがほれぼれするほどすきなんだい
「おれも世の中の悪役になるんだ!
「反則で人生をわたってやるさっ つよくずうずうしく! どうせみなしごだもんなっ
健太少年のこの言葉を聞いてしまったタイガーマスクは、虎の穴仕込みの反則ファイトを捨て、死を覚悟したのならせめて正しい綺麗な「技のプロレス」をやって死のうと決心します。・・この辺り、思い出すと何だか泣けてくるねえ。歳をとると涙もろくなるというのは本当ぽいです。子供らに、男の背中を見せてあげようとしたんですね。
でもそのために虎の穴の殺し屋レスラー達の反則攻撃によって、タイガーマスクの試合はいつも悲壮なものになり・・テレビを観ていてタイガーが死んでしまうのではないかと、心臓を締め付けられるような気持ちでした。完全に、健太少年と同調してました(笑)。
虎の穴の刺客を次々と撃破したタイガーマスクの前に、赤き死の仮面という最凶のレスラーが現れた第一部最終章(月刊誌「ぼくら」休刊の為)で、赤き死の仮面の「ウルトラ大反則」に、ついに技のプロレスでは対抗しきれず、タイガーマスクは自分もそれ以上の反則技で死の仮面を倒して退けます。
健太達に正しい生き様を見せてあげられなかった、その自責から、日本のリングからどことも知れず姿を消したタイガーマスク。
ラストシーンは、でもそんなタイガーマスクを「大好きだい。やっぱり」と夜空を見上げ呟く、健太少年の寂しげな後姿で終わります。見上げた星空に浮かぶ、王者タイガーマスクのイメージ。・・ああここも思い出すとナミダ目になる(笑)。健太はタイガーマスクがあの「キザ兄ちゃん」である事を知らないまま。
あの時全国にたくさんいただろう、健太の分身たちが、あれから40年経って「キザ兄ちゃん」をやってるんですよね(^ω^)