ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 感想

「ペリリュー ─楽園のゲルニカ─」武田一義/平塚柾緒(太平洋戦争研究会)

最終第11巻を読みました。アニメ化決定!!! だそうで、これは嬉しい。

<今と戦争の時代を結ぶ人生の物語、完結。そして……アニメ化決定!!!>

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ネタバレを避けた感想

気になっていた、主人公・田丸の最も親しい戦友・吉敷くんの行方はどうなったのか? ・・生死を含め、どうとも取れそうな前巻の引きだったので、現実的にありえた落としどころにホッとしました。

ホッとした・・とはおかしな言い回しですが、クライマックスの前巻までかなり気持ちを揺さぶられた作品なので、最後がどう締めくくられるのかはとても大事なのです。力技の感動演出など入らないと良いな・・とか、若干被害妄想が膨らんだりしていたものですみません 笑。

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1巻~10巻


1月末、発売されたばかりの最新10巻まで読み終わる。夏予定の11巻で完結のようだ。

年初めに体調不良で寝込んでいた時に白泉社の公式サイトでたまたま見つけ、7巻くらいまでスマホで無料で読めた後、これは紙で置いておこうと思い、身体が治ってから書店をのぞいてみた。古本を除けば、こういう揃え方をしたのは「進撃の巨人」以来。


先に読まれた方々のweb上のレビューでよく見かけるのが「この可愛い絵柄だから、読み進むことができた」というもの。私も同じで、リアルな絵だと辛くて参っていたかもしれない。


8巻帯推薦文は「ベルセルク」の三浦健太郎氏(この時はまだご存命)。「ベルセルク」の場合、残虐描写など<これって作者さんの好みというか、性癖? なのだろうか・・>と思えるほど容赦なく念入りに描かれてあって(同じ白泉社サイトで全巻無料購読出来た)、自分的には1回読み終えるとギブアップな感じでした。

「進撃の巨人」でもたまに、若干引いてしまう残虐フィクション描写もありますね。何というか、昭和マンガにも残虐シーンはもち論あるにはあったけれど(永井豪先生の作品とか)、毛色が違うというか。


エロに例えると、昭和のロマンポルノ映画に対し、現在はネットでいつでも平気で観られる無修正動画みたいな違いというか・・。分かりにくい例えで恐縮です 笑。「GANTZ」あたりからその辺の流れが目立つようになった気がする。



ちょっと話がそれたが「ペリリュー ─楽園のゲルニカ─」はフィクションとしての残虐さとは正反対に、私たち日本人のお爺さんたちが実際に経験されたノンフィクションを、資料を基に描かれている。その際、プロの作家として誰にも分かり易く出来事を伝えるために自分の可愛い絵柄を選んだ、のだろう。とはいえ、この可愛い絵でも、ひとつエピソードを読んでは夜寝る時に哀しくて困ってしまった。改めてマンガの表現力と力は凄いものです。


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戦争もの

戦争の時代を題材にとったマンガや読み物は、どちらかというと斜めに身構えて読むことがあります。広告関連の仕事に長く携わっていると、例えば他者にものを伝える時に「情報」と「意見」の二輪があるのだと、経験で分かります。売れる広告ほど、有益な「情報」の伝え方が上手く、その逆はやたら「意見」ばかりに走る。


起こったことを伝えるよりも右だの左だののイデオロギーが先走ってしまうと思えるんです。作者さんご自身に伝えたいことへの思い入れが強いほど。それだけ大きくて重すぎる歴史なので、それは人として当然のことですが、情報がぼやけたものになる場合があります。

「ペリリュー ─楽園のゲルニカ─」は、出来事をニュートラルに伝えようとしていると感じます。子供にも分かり易く。

「この世界の片隅に」の映画配信を観た時に同様の印象を受けました。戦後70年が経って、新しい世代への新しい伝え方が始まっているのだなと思えました。

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11巻


1万人の日本兵が死んだペリリュー島の闘いが終わり、持久部隊残り34名が日本へと帰った。


最終11巻では、現代の出版社に勤務するマンガ担当編集者氏とマンガ家さん(武田一義さんご本人がモデルなのでしょう)による田丸への取材と、老齢により田丸自身が動けなくなった後の実際のペリリュー島遺骨収集同行での体験などを通して、戦後から現代までの「ペリリュー ─楽園のゲルニカ─」のその後が描かれる。

「功績係(※)」だった田丸が、帰れなかった戦友たちのご遺族を訪ねて回るお話は、私自身もここ数年で親族の娘、また最も影響とご恩を受けた友人と先輩を続けて失っているので、ご遺族の気持ちなど現実的に理解できなくもなく、そこは少し私的にも辛かったです。

※功績係・・兵士の戦功について記録する係。戦死した兵士遺族のために「盛った」内容を記した手紙を作ることもある。主人公・田丸はマンガ家志望だった特技を買われ功績係となった。


そして最後、ペリリュー島で「あの状態」で行方が知れなくなった吉敷くんは、どうなっていたのか・・?


さて決定したアニメ化は、完成まで数年はかかるということですが、楽しみですね。といっても内容はすごく辛く恐ろしいものですが。本当に、この可愛い絵柄のお陰で助かりました。

テレビアニメだと制約は多いのでしょうが、どうか原作に準拠した作りになってほしいです。


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「ペリリュー ─外伝─」


「ペリリュー ─楽園のゲルニカ─」は、2年間で30万部超えの、戦争マンガとしては異例のヒットだそうです。吉敷くん他のスピンオフが始まるとか。

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