禊ぎ神話と大分 ねんど古事記余話 大分編(2)


ねんど古事記第2話「禊ぎ」神話の、ずっと後の第9話「神武東遷」神話にて、大分市佐賀関に伝わる伝承です。


豊予海峡の海底で大ダコが宝剣を守っていた。

海女の神が大ダコから剣を取り上げ、カムヤマトイハレビコ(後の神武天皇)に献上した。

剣は、イハレビコの祖先・イザナギノミコトが「禊ぎ」の際に海に落とした神剣だった。

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禊ぎ神話の舞台は宮崎県。神剣は何故大分の海に落とされていたと伝わっているのだろう? と、調べていたところ、日本書紀の記述に「禊ぎは初め鳴門海峡、次に豊予海峡で行おうとして、潮の流れが速すぎたので諦めて宮崎に向かった(意訳)」とあるそうで、辻褄が合いました。

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この神話エピソードはこの他まだまだ広がりを見せますが、「神剣」の行方など、この後の古事記神話エピソードと絡めて、改めてまたご紹介します。

2012年の古事記編纂1300年「神話博しまね」で、人形の製作と撮影のお仕事をさせて頂いたご縁がきっかけで、神話は自分のライフワークとなりました。

神話の本場のひとつ島根県で出雲神話伝承を取材する中で、古事記や日本書紀で記されている以外にも、ご当地に残る伝承が数多くあるのを知りました。考えてみれば、たまたま記紀(きき=古事記と日本書紀を合わせてこう呼びます)や風土記に編纂される以前は大方が口頭などによる伝承だったでしょうから、それはそうですよね。

人形撮影という目的と、ご当地をフィールドワークして民間伝承に触れるのも、ロケの大きな楽しみです。早く疫病が収束して、日本中を自由に訪ねたいですね。

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ロケ地/大分市佐賀関、地蔵崎、関崎灯台付近から見た、豊予海峡。

海の右奥に見える島は、高島という大分市の無人島。高島も、第9話「神武東遷」神話にまつわる大きなエピソードがありますので、改めてまたご紹介します。

左奥は、四国、愛媛県の佐田岬。佐賀関から見ると本当に近くにあります。

ちなみにこの写真で見て、ちょうど高島と佐田岬の中間くらいの位置が「関サバ・関アジ」が獲れる場所。夜明け前から午前中にかけて、関の一本釣り漁船がたくさん浮かんでいます。


「宝剣タコ」がイザナギの神剣を守っていたとされるのは、この写真の中段左端あたり。「権現礁(ごんげんべい)」という広範囲な暗礁地帯で、昔から船の座礁で知られた場所。権現礁の暗礁に宝剣タコがいたほら穴があり、ほら穴は竜宮城に続いているとされます。

日本最古の昔ばなしともいわれる浦島太郎伝承は神話との関りが深く、第8話の「海幸彦・山幸彦」で軽く触れましたが、これも後日改めて詳しくご紹介します。


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私が人形を置いてこの海を撮影していた、「地蔵崎」の関崎灯台横には、豊後水道~豊予海峡の荒波と暗礁からの舟の無事を祈る「波除け地蔵」があり、地蔵は役行者による建立と伝わっています。このお話も、ねんど人形と相性が合いますね。ここ数年何度か佐賀関他で、お地蔵さん制作のワークショップなど開催させて頂きました。ありがとうございました。


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姉妹の海女の神イサゴとマサゴ


大分市佐賀関の伝承で、宝剣タコから剣を取り上げた海女の神姉妹の、イサゴとマサゴ。剣をイハレビコに献上した後、力尽きて絶命したという。

背景に写る、しめ縄を張った岩は「ビシャゴ浦の姉妹岩」。イサゴとマサゴが祀られている。

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