ペリリュー ─楽園のゲルニカ─
「ペリリュー ─楽園のゲルニカ─」武田一義/平塚柾緒(太平洋戦争研究会)
1月末に発売の最新10巻まで読み終わる。夏予定の11巻で完結のようだ。
先々週体調不良で寝込んでいた時に、白泉社の公式サイトでたまたま見つけました。7巻くらいまでスマホで無料で読めたのだが、これは紙で置いておこうと思い、身体が治ってから書店をのぞいてみた。古本を除けば、こういう揃え方は「進撃の巨人」以来。
先に読まれた方々のレビューでよく見かけるのが「この可愛い絵柄だから、読み進むことができた」というもの。私も同じで、リアルな絵だと辛くて参っていたかもしれない。
8巻帯推薦文作者の「ベルセルク」だったりすると、残虐描写など<これって作者さんの好みというか、性癖? なのだろうか・・>と思えるほど容赦なく念入りに描かれてあって(同じ白泉社サイトで全巻無料購読出来た)、1回読むともうギブアップな感じでした。「進撃の巨人」でもたまに、若干引いてしまう残虐フィクション描写もあり。何というか、昭和マンガにも残虐シーンはもち論あるにはあったけれど(永井豪先生の作品とか)、毛色が違うというか。エロに例えるとロマンポルノ映画と裏ビデオみたいな違いというか。分かりにくい例えで恐縮です。「GANTZ」あたりからその辺の流れが目立つようになった気がする。
ちょっと話がそれたが「ペリリュー ─楽園のゲルニカ─」はフィクションとしての残虐さとは正反対に、私たち日本人のお爺さんたちが実際に経験されたことを、資料を基に描いている。その際、プロの作家として誰にも分かり易く出来事を伝えるために自分の可愛い絵柄を選んだ、のだろう。とはいえ、この可愛い絵でも、ひとつエピソードを読んでは夜寝る時に哀しくて困ってしまった。改めてマンガの表現力と力は凄いものです。
さてもうひとつ。戦争の時代を題材にとったマンガや読み物は、どちらかというと斜めに身構えて読むことがあります。広告関連の仕事に長く携わっていると、例えば他者にものを伝える時に「情報」と「意見」の二輪があると経験で分かります。売れる広告ほど、有益な「情報」の伝え方が上手く、その逆はやたら「意見」ばかりに走る。
起こったことを伝えるよりも右だの左だののイデオロギーが先走ってしまうと思えるんです。作者さんに思い入れが強いほど。それだけ大きくて重すぎる歴史なので、それは人として当然のことですが、情報がぼやけたものになる場合があります。
「ペリリュー ─楽園のゲルニカ─」は、出来事をニュートラルに伝えようとしていると感じます。子供にも分かり易く。「この世界の片隅に」の映画を観て印象を受けましたが、戦後70年が経って、新しい世代への新しい伝え方が始まっていると思います。
(02.07追記 Facebookで、他に良い作品あったら教えてくださいと話題になったので)
戦争時代を描いた作品に詳しいというわけではないですが、藤子不二雄A先生の「少年時代」は、原作者柏原兵三氏の子供時代の戦時疎開の体験と、偶然同じ時期に隣村に疎開されていた安孫子素雄(A)先生の体験とが元になっていて、またそれが映画化されたものは、マンガを原作にした実写映画の中では、自分にとっては最高傑作と思えます(きれいなおねえさんが出ているシーンだけは、映画による付け足しですが 笑)。
https://www.youtube.com/watch?v=01gKRpKLIOg
そういえば「この世界の片隅に」以前にも、この「少年時代」という昭和の名作がありましたね。