黄泉の国 ねんど古事記の2
黄泉の国のお話です。
こちらは、島根県の松江市にあります、黄泉比良坂(よもつひらさか)。イザナミの死を受け入れられないイザナキノミコトは、ここから黄泉の国に入り、イザナミに会いにいきました。
ここから出雲神話ですね。実際の黄泉比良坂は、ここから100メートルほど右側の、奥に入った場所だそうですが、観光的にはここが最も見栄えが良いですね。
悲しんだイザナキは死んだ人の住む黄泉の国まで行き、「愛しいイザナミよ。どうか帰ってきておくれ。」と呼びかけます。しかし、そこで目にしたイザナミは変わり果てた姿でした。
(一畑電車出雲大社前駅で開催中の、古事記編纂1300年「神話博しまね」創作神話フィギュアジオラマ展のリーフレット「出雲神話絵巻」より抜粋)
「あなたが早くいらっしゃらなくて残念です。私は、黄泉の国で作った食べ物を口にしてしまったので、もう帰れません。でも、いとしい私の夫よ。あなたが来てくださったので、黄泉の国の神と相談しましょう。その間、けっして私を見ないでください」
と言って、(イザナミは)黄泉の国の御殿の中に入りました(「ふるさと読本いずも神話/島根県教育委員会」より))。
「鶴の恩返し」「雪女」「浦島太郎」でよく知られる、「見てはいけない」「○○してはいけない」~という、日本の民話伝承のスタンダードな物語の、これが始まりですね。タブーを課すのは大方が女性で、そういわれると破ってしまいお約束の酷い目にあうのは男の役割です(笑)。
イザナミを待ちきれないイザナキは、髪のみづら(古代のヘアスタイルの、横に束ねたアレ)にさしていた櫛の歯に火をともし、御殿のイザナミを覗き見てしまうが、死者として腐り果てていたイザナミの身体には、蛆がたかり、頭、胸、腹、陰部、両手、両足に八種の雷神が発生して、ゴロゴロと音を鳴り響かせていた。
恐れおののき、黄泉の国から逃げ帰るイザナキ。
「あなたは私に恥をかかせましたね」
イザナミはヨモツシコメ(黄泉醜女)達に命じ、イザナキを追わせた。
ヨモツシコメ。「黄泉醜女」と書いてヨモツシコメですが、「醜女」というのは現代での「醜い女」の意味ではなく、「霊力の高い女」という意味で使われていた様です。「黄泉の国の、霊力の高い女」で、死者の国の側の巫女さんみたいな感じなのでしょうか。
見た目的にはゾンビ女みたいなイメージでしょうが、私は子供に親しんでもらいたいために、ちびっこ風なデザインで造形しました
イザナミの命でイザナキを追うも、イザナキが頭飾りや櫛の歯を投げて山ぶどうや竹の子に変えると、食い意地が張っているのでそれに喰らいついてしまい、使命が果たせません(笑)。いかにも日本の妖怪ぽい性質ですね。
イザナミはさらに、八雷神に千五百の黄泉の軍勢をつけて、イザナキを追わせた。
イザナキは十束剣(とつかのつるぎ)を後ろ手に降る(お呪いのしぐさ)が、効果はない。黄泉比良坂のふもとまで逃げた時、そこにあった桃の木の実を取り投げつけると、雷神と軍勢は黄泉の国に戻っていったのだった。
・・さすがに、そこまで大勢のねんど人形は作れませんね。
「いとしい私の夫よ。あなたがこんなことをするのなら、あなたの国の人を一日千人、殺してやるわ」
「いとしい妻よ。おまえが千人殺すなら、私は、一日に千五百の産屋を建てよう」
(「ふるさと読本いずも神話/島根県教育委員会」より抜粋))
イザナキが黄泉醜女、八雷神、黄泉の軍勢を退けると、ついにイザナミ自身が追いかけてきた。千人引きの大岩で黄泉比良坂をふさぐイザナキに、イザナミが告げる。
日本最初の夫婦喧嘩と別れのお話ではあるのですが、ここで2人とも互いに「いとしい私の夫よ」、「いとしい妻よ」と呼び合っているのが、切ないですね。
イザナミが一日千人の命を奪い、イザナキは千五百の命が生まれるようにする・・この時に交わされたイザナキとイザナミのこの言葉により、日本の人口はそれから増えていったといいます。
「黄泉の国」のお話でした。
そして「禊ぎ」のお話。
黄泉の国から生者の国に戻ったイザナキは「筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原(つくしのひむかのおとのあわきのはら)」という場所で禊ぎをし、身体を清めます。
この禊ぎをした場所は、宮崎県の、小戸の阿波岐原にある池といわれますが、この時、実は大分にもとても大きく関わりのあるエピソードがあります。終わりの方で出てきますので、どうぞお楽しみに。
そして、イザナキが禊ぎで身体を洗うと、たくさんのヤオヨロズノカミが産まれます。神様なので、産まれるというのも人間とはかなり違いますね。
イザナキが最後に左目を洗うと、「アマテラス」、右目を洗うと「ツクヨミ」、そして鼻を洗うと「スサノオ」が産まれました。
この三柱の神を三貴子、さんきし、最も貴い神ということで、みはしらのうずのみこ、といいます。
イザナキは太陽の神アマテラスに「高天原(たかまがはら、たかまのはら)=天界」を治めることを任せ、月の神ツクヨミに「夜の食国(おすくに)」を、そしてスサノオに海原を任せました
さて、ここから先の日本神話は、「アマテラスとスサノオの物語」といえるかもしれません。この続きは「岩戸開き ねんど古事記の3」にて。