ワースト/小室孝太郎 少年ジャンプ 昭44

小室孝太郎「ワースト」は、’69年(昭和44)に「少年ジャンプ」で連載されたSFドラマです。昭和マンガの名作中の名作のひとつに数えられますが、日の目を見ない時期が長く続きました。事情は、現在ではネットで調べればその詳細がよく分かるので置いておきましょう。

2000年(平成12)に朝日ソノラマより愛蔵版が出るまでは、30年も幻の名作扱いでした(サンコミックスで単行本化はされていましたが、当時プレミアがつきすぎていて入手出来ず)。


私は怖いマンガには強い方な子供だったのですが、小学低学年時に読んだ「ワースト」は、恐怖マンガのジャンルではありませんが頭に焼き付いてしまう、怖い場面がありました。

世界中に降った、謎のウィルス入りの雨を浴びた人間が不調を訴え死に絶えてしまう。主人公の1人である少年の目の前で、死んでいる両親がワーストマンに変化して動き出します。「茶の間にある、蘇るひび割れだらけの両親」「押し入れに隠れてそれを見る少年」のシーンがあり、その後1人で留守番の時に雨が降ったりするとお茶の間でイヤ〜な気持ちになりました。今でも、しとしと雨が降るたびに思い出します(笑)。

上のエピソードから連想されると思いますが、映画「ゾンビ(’78)」の10年近くも前の、日本製ゾンビマンガ作品でもありますね。といっても、ゾンビ要素の部分は終末SFの名作「ワースト」の、一面に過ぎないですが。


ここからは、作品の核心部分のネタバレにもなりますが、「ワースト」で描かれていたテーマは「受け継いでいく事」でした。コミックス4巻分の長さの物語で、初めの1巻分の終わりで主人公の少年(高校生位)が小さな子を救って、あっけなく死んでしまったのです。これには、驚きました。

第二部主人公は、最初の少年の弟分(茶の間で父母のワーストマン化を見た少年)の数年後。兄貴分の死以来、ワーストマンを倒す為に勉強を重ね、身体を鍛え、生き残った人間達のリーダーとなる。そしてさらに第三部の主人公は、その孫。その間、知能がなかったワーストマンにも次第に知恵の様なものがついていき・・。


第一部の主人公だった少年の子供を産んだ女性が、後にワーストマンに襲われて感染し、死に際に残したテープレコーダーにこの作品のテーマを象徴する言葉が残されています。以下、要約です。

「あなたたちはかんじんなことをわすれているのじゃないかしら‥‥?
ワーストマンはどんどんふえているのに人間はちっともふえてないじゃないの!
なぜ結婚しないの? 女性だってたくさん 生きのこってるのよ
たとえあななたちがワーストマンをたおすことができても‥‥
この地球をさかえさせていくのは あななたちの子孫じゃない!
じぶんたちの意思をつぐ子どもたちをのこしておくべきよ」

こんな作品を、子供時代に読んでいたのですから幸運です。「ワースト」・・アニメなどでリメイクされないだろうかなあ。


ワースト/小室孝太郎 少年ジャンプ 昭44

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