怪奇大作戦 第1話/壁ぬけ男
「怪奇大作戦」の初回放映は、昭和43(‘ 68)年9月からだから、私は小学1年生だった。とにかくもう、怖くて怖くて、・・なんというか、「あ”あ”あ”あ”~~!」と叫び出したくなるくらいに怖かった。次回予告編で、森の中を生首が飛んでいるのを見た時なんか、もうやめてくれという感じだった。そんなに怖ければ、見なければ済むことなんだけど(笑)。”怖いもの見たさ”・・あれって面白い心理だね。次の日学校で友達と、「昨日のはしんけん怖かったなぇー(” しんけん ” は大分弁)」と話している時の、私を含めた皆の、妙に興奮して上気した顔といったらなかったな。
CS放送で、今月から「怪奇大作戦」が始まった。第1水、木曜日に4話まとめて放送、・・その後は毎土曜夜の11時半から1話づつ(チャンネルNECOで)。以前他チャンネルでもやっていたので、その時に一応ほぼ録画はしているのだが、やっぱりまた観てしまう。我ながら好きだね。
第1話は、「壁ぬけ男」。
20歳くらいの時に、一度友達の家でビデオで観て、”怪盗キング・アラジン”のメイクがチャチく感じて笑ってしまったことがあるのだが、今もう一度観直してみると、そんなことは全くどうでも良く、やはり相当に怖い、コレは。・・冒頭のシーンで、盗んだ仏像を手に、警官の前に姿を表したキング・アラジン。テープの回転数が徐々におちていくようなエフェクトの「は、は、は、は、ほぉあ、ほぉゎあ」という笑い声も強烈だが、にわかに体を逆エビに反らせ、自分の両足の後側から(股の下から)顔をのぞかせるポーズ。そしてその姿勢のままで、壁ぬけを敢行。 ・・驚いてしまった。怖すぎる。
何の前後の脈絡もなく、ふいに意味不明な動きとかを見せられたりすると、ホントに怖いものだ。「ウルトラQ」で、隕石から出てきたガラモンが、まるで3歳児のだだっこが食卓の茶わんなんかをガチャガチャにしてしまうような動きでダムを破壊した時も、ずい分ショックだったなあ。
「さようならー、みなさん。さようならー。はっはっはっは。
・・私はつかまらん。私は世界一のマジシャンだ。はっはっはっははははは」
キング・アラジンの正体は、10年前に ” 水中箱ぬけ ” の奇術に失敗し、以来消息を断っていた、昔有名だった奇術師だった。SRIの科学調査で「壁ぬけ」のトリックも見破られ、箱に入って湖底に逃げる奇術師。
「大丈夫です。喝采が聞こえるといって、いつも潜っておりましたから・・」
「・・狂ってるのか!?」
モニターに写し出された奇術師を見つめる妻の、やさしい視線がとても哀しい。水中に潜った奇術師の耳には、10年前の失敗以来誰からも貰えなくなった、観客の拍手喝采が聞こえてくるのだった。無邪気にはしゃぐ子供のように、得意満面な笑顔で口上を述べる、箱の中の奇術師(この顔がまたイイ。それで、その箱の中でもまたやっぱり、逆エビポーズ)。
「皆さま。これより一世一代の大魔術。・・水中50メートルからの箱ぬけー。
・・見事ぬけ出したる時には皆さま、万来の拍手ご喝采を、いただきとうございまするー・・」
初っぱなから ” キ○ガイ ” が主人公。
「怪奇大作戦」には、お蔵入りにされてしまったエピソードなどもある(「狂鬼人間」の巻。裏ビデオは出回っているらしいが、まだ観たことはない)。でも、人間の心の闇に潜む恐怖を描き出そうと思ったら、”狂気”は避けて通れるテーマじゃないでしょう。生半可なドラマじゃないね、「怪奇大作戦」は。これから毎週、楽しみだ。