鬼来迎 頁1


「鬼来迎」



鬼来迎(きらいごう。鬼舞ともいわれる)は、千葉県山武郡横芝光町虫生の広済寺に伝わる、地獄の様相と菩薩の救いを仮面狂言にした日本唯一の民俗芸能。

地獄を再現し、因果応報・勧善懲悪の理法を説く仏教劇で、毎年地獄の釜の開く日といわれる月遅れのお盆の8月16日に演じられる。鎌倉時代初期に始まったといわれている。1975年(昭和50年)に、重要無形民俗文化財の第1回の指定を受けた。

劇は、地獄の責苦を骨子とした地獄譚「大序」「賽の河原」「釜入れ」「死出の山」の四段と、広済寺建立縁起譚「和尚道行」「墓参」「和尚物語」の三段、全七段からなる。舞台で演じられるのは地獄譚の四段。写真は「死出の山」より、地獄の獄卒(黒鬼・赤鬼)に責め苛まれる亡者を救おうとする観音菩薩。

「舞台浄め」


保存会会長さんの挨拶の後、二人の亡者が舞台の四隅に清めの塩をまく。かつては亡者は四人いたらしい。


「大序」


「大序」。場は地獄の閻魔の裁き所。閻魔大王、倶生神、鬼婆、黒鬼・赤鬼が、鐃鉢(にょうはち)や木板を激しく打ち鳴らす鳴り物と共に次々と登場し、亡者の生前の罪を判じる。「娑婆国中の大悪人」と判が下ると、鬼たちが亡者を連れ去る。

大序 閻魔大王


閻魔大王の登場。右手に筆、左手に笏(しゃく)を持ち、睥睨し威圧する仕草で中央に進んだ後、奥の床几に座る。


大序 倶生神


倶生神(ぐしょうじん)。人の誕生からその両肩に乗り善悪の行為を記録しており、閻魔大王に報告するのが役目の神。閻魔大王と同じく右手に筆、左手に笏を持つ。


大序 鬼婆


鬼婆(奪衣婆)。髪を振り乱して鬼婆の登場。右手に渋団扇、左手に杖を持つ。懐から米を出して撒き、拝む仕草をして座る。


ここで一旦、鬼婆に抱いてもらった赤ん坊は疳の虫がおさまり健やかに育つといわれる、「虫封じ」が行われる。


「虫封じ」


鬼来迎「大序」上演の幕間に行われる「虫封じ」。鬼婆に抱いてもらった赤ん坊は疳の虫がおさまり健やかに育つといわれている。今年は31人の赤ちゃんがこの世の地獄を見せられていました(笑)。


再び「大序」


「虫封じ」を終え、「大序」の再開。黒鬼と赤鬼の登場。


黒鬼。右手に火縄を持ち、腰に刀を差す地獄の獄卒。


赤鬼。棒を持ち振り回す地獄の獄卒。


女の亡者が現れ、鬼婆がこれを捕らえると、閻魔大王、倶生神の面前に引き据えた。


「鉄札の面ようく改め見よ」

閻魔大王の言を受け亡者に浄玻璃の鏡をかざす、倶生神。

「鉄札の面浄玻璃の鏡にかけ、改め見候ところ、娑婆国中の大悪人なり。
やあやあ獄卒どもこの罪人暫く獄舎に押し込めおけ。
追って沙汰に及ぶものなり」

亡者は鬼婆に連れ去られ退場。「大序」の幕となった。


広済寺 千葉県山武郡横芝光町虫生 2011年08月16日撮影

鬼来迎 頁2へ